準ライトノベル

ヴィーナスの命題:真木武志 角川書店

ぶっちゃけ読書って何の役にも立たないよね? と思う瞬間が無いわけでもなく いやいやたくさん読んだだけためになるんじゃないかと自己弁護したところで それなら十分以上に読んだんだからもういいだろう、これ以上読んだってそれほど新しいものが 得られる…

アリオッチ

アリオッチ! アリオッチ! 御身に血と魂を捧げん――今一度助けたまえ! アリオッチ! アリオッチ――御身に捧ぐべき魂がある! アリオッチ! 聞きたまえ! <七つの闇の王>アリオッチよ――御身の僕、御身を呼びたてまつる! マイケル・ムアコック氏の『エルリッ…

柳生雨月抄

『十兵衛両断』で活躍した陰陽師、柳生友景が朝鮮妖術師を相手に大活躍する話。 とりあえず誰かそろそろ荒山徹氏を止めるべきだと思いました。 オ○○ル、ア○○レ、○○ラについて。 あれは一見ただ面白いから付けたネーミングのように見えるけど、 マジな方面か…

神様のパズル

大学4年生の主人公が卒業控えてパタパタしつつ、 ゼミで一緒になった飛び級天才少女と宇宙の成り立ちを解明しようとする話。 とにかく物理。モロ物理。 「難しい理論とかをライトノベルでわかりやすく解説したら面白いんじゃね?」という趣旨のレスを以前ど…

まだ見ぬ冬の悲しみも

山本弘さんによるSF中篇集。本来の意味でのSFを読んだ気分。 グループSNEとかトンデモ本の人という知識しかなかったので、普通に面白いSF書いてるのに驚いた。 どの話にも現実を覆すような理論やホラやハッタリが入ってるのだけど、その各種原理がとてもわか…

ダブ(エ)ストン街道

何もかもが道に迷う島で、主人公が行方不明の恋人を探す話。 第8回メフィスト賞受賞作。作者は浅暮三文氏。 不思議な住民たちが迷いつつ生きている、地図にも載っていない謎の島。 実は自分、こういう『素性の分からない空間』が結構好きだったり。 例えばミ…

シャングリ・ラ

ただでさえユグドラで忙しいのに、どうしてこんな面白い本が手元にあるんだよう。 登場人物全員が決してあきらめない話。お前らたまには諦めることも必要ですよと突っ込みたくなるほど前向き。 終盤のテンションが只事じゃない。もうすぐ最後なのに誰も脱落…

準ライトノベル

一般にライトノベルというと、電撃富士見角川富士ミスMF文庫Jファミ通SDハヤカワ講談社等から 出版されてるアニメ絵表紙の文庫本を指すわけです。 で、今まで自分は 『上記の意味でのライトノベルを読める人なら十分ライトノベルとして楽しめる』 小説をまと…

オーデュボンの祈り

橘さんをもずく風呂に漬けて洗脳した人と苗字が同じだけど、別にその人とは関係ない伊坂幸太郎氏のデビュー作。 デビュー作でこれを書けることが凄いです。ストーリー構成と人物描写の秀逸さはこの頃からしっかり感じられます。 散りばめられた情報のパズル…

あなたの人生の物語

無茶なスケールのアイデアを駆使して現実を超えた現実を読者に叩きつける中編小説集。 作者はテッド・チャン氏。収録されてる8編から、特に気に入った3つを紹介。 『バビロンの塔』 何世紀もの間煉瓦を積み上げ、今まさに天に届こうとするバベルの塔を登る鉱…

柳生薔薇剣

荒唐無稽というか、紙一重の領域での華麗な群舞の披露というか、名状しがたき冒涜的な四角形というか、 見えた神の雷というか、黙れそして聞けというか、耳元で怒鳴るなというか、うああっ!パ、パワーが違いすぎるというか、 水は天より落ちるものでその逆…

チルドレン

伊坂幸太郎氏の連作短編集。橘さんの宿敵と苗字が同じとかそういうのとは関係なく、ただこの人の文章が好きだから読んでみた。 相変わらずの良作。誰にでも胸を張って勧められる貴重な本。 どんな脇キャラでも魅力的に見せてしまう地に足付いたキャラ描写と…

夏への扉

ロバート・A・ハインライン氏による結構有名な小説。言及されてる全ての場所で例外なく神扱いされてるので読んでみた。 訳者後書きにもあるように、SFとして特に目新しいギミックが使われてるわけではないけど、それでもこれは確かにいい。 夏への扉を探す猫…

信ぜざる者コブナント 邪悪な石の戦い

主人公が思いっきり全力で後ろ向きな異世界召喚シリーズの第二部。 キャラの言動を通して世界観を物語る手法は設定好きとして嬉しい限り。台詞の一つ一つからその世界に生きている重みが感じられる。 他に思いつかないからわかりにくい例で言うと、自分が初…

信ぜざる者コブナント  第1部 破滅の種子 上

こないだ読んだ本で作者が面白いと言ってたし、前にもラ板の雑談スレ辺りで名作だと聞いた覚えがあるので読んでみた。 不治の病で隔離されて鬱入ってる主人公がファンタジー世界に召喚されて英雄扱いされるというある意味王道モノなのだけど、 肝心の主人公…

魔風海峡 死闘! 真田十勇士 対 高麗七忍衆

朝鮮時代モノの第一人者、荒山徹氏の小説。氏の本はこれで3冊目。 内容はまずサブタイトルから各自想像してましょう。多分あなたの最悪の予想より3倍くらい頭悪いです。 何となくだけど、この人は読者が「バカだー! この人バカだー!」と爆笑しつつ叫ぶのを…

魔岩伝説

江戸末期を舞台に剣士とかヒロインとか柳生とか朝鮮忍術使いとかが暴れまわる小説。作者は荒山徹氏。 今年読んだ中でトップクラスに狂った話。どうしたらここまで真顔でもっともらしいデタラメを書けるのか。 もう読んでて笑うしかないレベル。どう考えても…

ふりだしに戻る

ノルタルジアな作品を多数書いてるジャック・フィニイ氏の小説。 ダブルクロス・リプレイ・オリジン1巻に出てきたシナリオの鍵となる能力の 元ネタらしいので読んでみたけど、そういうの関係なく普通に楽しめた。 特筆すべきは情景描写の細かさ丁寧さ。過ぎ…

十兵衛両断

今年読んだ本の中でトップクラスに頭悪い(褒め言葉)柳生小説集。作者は荒山徹氏。 とにかく読まなきゃ損としか言いようがない幸せな本。新潮社から文庫版が出てるので 新品でも図書館でも古本屋でも、見かけたらその場でゲットすべし。 というか4番目の呪…

キマイラの新しい城

講談社ノベルスから去年発売された殊能将之氏の小説。密室殺人の被害者である騎士の幽霊の話。 「ハサミ男」とか「美濃牛」とか、他の作品にも共通している事なのだけど、とにかくこの作者は人物を描くのが上手い。 突飛な特徴付けに頼らず、何気ない仕草や…

魔の都の二剣士

『ファファード&グレイ・マウザー』シリーズの1作目。主人公の剣士2人が盗賊ギルドに喧嘩売る話。 昔『クロちゃんのRPG千夜一夜』の1巻か2巻かで紹介されてた覚えがあったので読んでみた。 正直、予想以上の出来。書かれたのは半世紀以上前なのだけど、その…

アヒルと鴨のコインロッカー

「う、うらぎられた!」(26歳男性 プロレスラー) 「橘さーん! 本当に裏切ったんですかー!?」(22歳男性 企業警備員) 「俺の右腕はここにある」(44歳男性 自営業) 「橘さんもアンデッドに操られてます!」(17歳男性 高校生) 「あの世で俺にわび続け…

陽気なギャングが地球を回す

橘さんの宿敵と苗字が同じな伊坂幸太郎氏の小説。本屋で見かけた文庫版が安かったので読んでみた。 楽しい銀行強盗4人が楽しく騒ぎながら銀行強盗する話。何か映画化決定らしい。 この人の本を読むのは「死神の精度」以来だったけど、異様なほどの読みやすさ…

ぼくのキャノン

たぶん沖縄を描かせたら日本で一番の作家、池上永一氏の小説。 その氏の作品の中で一番最近読んで一番気に入ったのがこれ。 生涯を費やして村の秘密を守り続けるオジィにオバァが格好良すぎ。その孫達も同じくらい凄い。 そして全てのきっかけであり、村人を…

ライ麦畑でつかまえて

やたら有名なタイトルだし、佐藤友哉氏も色々影響受けてるらしいので読んでみた。 文体は主人公の1人称で内容は純文学8割ライトノベル2割といった感じ。確かに佐藤友哉氏の文章っぽい。 今では割と珍しくない形式だけど、出版が1951年という事を考えると凄い…

レキオス

池上永一氏による軍人や魔術師や女子高生やオバァが沖縄を舞台に暴れまわる破天荒小説。 読んだ第一印象は「沖縄凄い。マジ凄い」 氏は沖縄出身なのだけどで、これほど沖縄を面白く描ける人はあんまりいないと思う。 とにかく読んだら最後、沖縄に関する印象…

折れた魔剣

6月に発売されたハヤカワ文庫名作セレクションの1つ。作者はポール・アンダースン氏。 ライトノベル板の新人賞スレと、あと巡回してるブログでも良い評判聞いたので読んでみた。 キリスト教の新しい神が勢力を伸ばしてきた時代のイングランドを舞台に妖精や…

ベルカ、吠えないのか?

文章に圧倒される、というのは滅多にできない経験だと思う。決定的に何かが違う。 言霊を操れる物書きは確かに存在する。この本がその証拠。 辞書に載ってる単語と50音の組み合わせを方法として構築された無削除の到達点。

死神の精度

伊坂幸太郎氏の作品。少し前にラノベ板の新人賞スレッドで誰かが面白いと言ってたし、作者の苗字が橘さんの宿敵と同じだったので読んでみた。 舞台は現代日本で主人公は死神。これほど現実感のあるフィクション読んだのは久しぶり。似た作品がとっさに浮かば…

ボーイソプラノ

吉川良太郎氏の2作目。これで単行本化してる氏の作品は全部。 主人公は前作に出てきた探偵。小説に出てくるようなハードボイルドな探偵からちょい現実側にズレてる人。 お話のように物凄くタフでクールというわけではないけれど、その不完全さが逆に格好良さ…