柳生薔薇剣



荒唐無稽というか、紙一重の領域での華麗な群舞の披露というか、名状しがたき冒涜的な四角形というか、
見えた神の雷というか、黙れそして聞けというか、耳元で怒鳴るなというか、うああっ!パ、パワーが違いすぎるというか、
水は天より落ちるものでその逆は無いというか、こうなったらイチかバチかだというか、ゴッドアルファがラーイというか、
とにかくそんな感じの伝奇小説を書く荒山徹氏の最新作。タイトルは『バラ』でなく『そうび』と読むのでその辺注意。


時代設定は『十兵衛両断』の少し前。
主人公は柳生家長女の23歳で無刀取りを習得済み。自分より弱い男と結婚する気はないとかそんな感じ。
正直、『魔風海峡』とか『十兵衛両断』とか『魔岩伝説』と比べると荒山度低めです。
比較対象の死狂い具合を差し引いてもまだ低め。敵も味方もストーリーも常識の範囲内なので、その辺期待すると肩透かし食らうかも。


荒山ファンが箸休めに読む番外編、と考えておけば間違いないかと。他の作品を先に読んでると楽しめる要素がちらほらと。
美人の姉にすっかり懐いてはしゃいでる若き日の十兵衛とか。この頃はまだ朝鮮妖術の餌食になる前で快活単純陽気な人です。
というか今作最大の萌えキャラは女主人公の柳生矩香でなくこの十兵衛です。一種のギャップ萌え。あの人にもこんな時代があったなんて。


それと『十兵衛両断』で少しだけ登場した柳生陰陽師の友景も出演します。この人は日常的に朝鮮妖術師と戦ってるらしいです。
他の作品への布石と思われる彼の活躍も語られてます。あの見開き2ページだけ荒山度がやたら高かったです。
その中でも特に濃度高いのが帝との会話シーン。ある意味氏の全てがあの数行に濃縮されてます。立ち読みするならば是非P210〜P211を。


目についたのはそんな所でしょうか。
とりあえず氏の作品はこれからも増え続けるでしょうから、年表とかあるとあれこれ楽しい事になると思います。
自分の知ってる限りでは時代の古い順に『魔風海峡』→『柳生薔薇剣』→『十兵衛両断』→『魔岩伝説』
一応史実を元に細かく年代が語られてるので、全冊保有している方なら簡単に作れるかと。