ゲーム好きの本読みにこそ遊んで欲しいフラジール





女の子探して廃墟の中を探索するゲームなんですど、プレイ感覚が「ゲームを遊んでる」というより
「よくできた小説を読んでる感じ」に近いんですよ。敵とか出てくるのにAVGよりも小説っぽい。


それはもちろん本筋のストーリーや主人公の独白、断片的に語られるかつて生きていた人々のエピソードが
分量的には少なくとも言葉をしっかり吟味された良質かつ濃厚のテキストで構成されていることにも起因してるんですけど、
他に大きな要因として「描かれた廃墟の中を自分で操作する主人公が彷徨う」というのがあると思うんです。


フラジールの廃墟は主人公の単なる移動経路ではなく、それ自体がプレイヤーに訴えかける物語の一部です。
ひび割れた建築物に赤茶けた金属、それらを穏やかに覆っていく植物、そして見上げれば月がある。
人はいなくてもあちこちに残された落書きや散乱した書類、テーブルの上の電気ポッドは確かにかつて誰かが生きていた証で。


テキストが表示されなくてもそれらを見たプレイヤーの中には物語が語られて、その上で各所のテキストが加わりますから
つまるところプレイヤーはずっと物語に浸っていることになるわけで、だからこのゲームはゲームというより小説に近いです。
あんまり長くないですけど、1時間半〜2時間くらいで休憩したくなるのでじっくり楽しめます。


ぶっちゃけゲームっぽく見える部分はおまけなので戦闘とかアイテム管理は割と適当にやっても大丈夫です。5回くらい死にましたけど。
その分の時間と労力は気に入った廃墟をじっくり見たりサブテキストの七色クロシェット(著:紅玉いづき)でボロ泣きしたりするのに費やすのが良いかと。