ファンタシースターZERO レイマールさん奮闘記:その3



ファンタシースター ZERO

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レイマール   :レンジャー・ヒューマン・女
フォニューム  :フォース・ニューマン・男
ヒューキャシール:ハンター・キャスト・女


ハンター(Hu) :近接攻撃最強
レンジャー(Ra):銃撃のエキスパート
フォース(Fo) :テクニック(魔法)最強


レイマールさんが高田馬場のさかえ通りでタイムサービス180円の中生ジョッキを片手に
「お前らにRaの悲しみの何がわかるってんだよ!」
といつものようにクダを巻いてからふらつく足で家に帰ろうとするとボス戦っぽいBGMとともに悪魔が出た。


「初めまして! ベル・デルです! 不死です! けど私が契約してないあるもので刺されると死ぬぞ!」


デビルサバイバー時空からの放浪者であった。
超強そうな中ボスオーラを全身から放射しながら「私はこれからマップ全体攻撃をしますけど食らった一般人が1人でも死んだらゲームオーバーですんで」
と、敗北条件の説明に入った悪魔に向かってレイマールさんが口を開いた。


「すいません出るゲーム間違えてますよ」
「えっマジで!?」
「ええ、積まれてますけど今刺さってるのはPS0ですから」


それを聞いたベル・デルはしょんぼりしながら「なるだけ早くそっちもクリアして下さいね」と言い残して
手下のバジリスクやケット・シーたちと一緒におうちに帰った。レイマールさんはL+→のロビーモーションで「おつかれさま!」って言って見送った。


それはさておきボス戦におけるHuの超火力を見て悲しみを背負ったレイマールさんはサウザーで負けてレイに乗り換えたえぐれホタテさん的な意味合いで
悪魔に魂を売る事を決意した。


「あ、悪魔を倒すには……悪魔だ!」
「過去700人を殺し、死刑執行されること13回! だがそのことごとくを生き延びた!」


と、通販のカタログを見ながらデビルリバースごっこをしていたレイマールさんがふと目を上げると
期待に目を輝かせたベル・デルが窓に張り付いてこちらを見ていたので「シッシッ」と手を振ると悲しそうな様子で今度こそおうちに帰った。


しばらくして買いたい物が決まったレイマールさんはカタログに載っていた番号に電話した。


「はいこちらセガです」
「紫色のヒューキャシール1台お願いします。マグは赤色で。あ、クーポンもあります」
「かしこまりました。それではクーポンの番号をお願いいたします」
「PS-31です」
「ありがとうございます。ただいま少々混みあっておりますので30分から40分ほどかかりますが、よろしいでしょうか?」
「はいそれで。よろしくどうぞー」


30分後、セガの人がやってきてキャスト1体とコーラ3本を置いて出ていった。
ヒューキャシールである。Huである。しかもキャスト。一切のテク・補助が使えない代わりにPS0における最大攻撃力を備えた火力的に鉄板の構成である。


「まあ最近トランクにHu用の装備も溜まってきましたし、ここまで来たらやっぱり全職作らないと落ち着かないし、
 こいつはRaが行けない場所に乗り込んでレアを掘るためのスコップみたいなものですから!」


と、苦しい言い訳をしたレイマールさんはさっそく起動させると遠隔操縦で豊島区のハンターズギルドへ向かわせた。
フィールドに出ると敵が寄って来たので初めて使う双小剣を持っておろおろしながらPK百人斬り時のハセヲさんみたいな動きをすると皆あっさり死んだ。


「……まだ動きが固い」
と、GTロボに乗ったスタージュン様みたいな事を言いながら歩いてるとボスが出たのでLボタンでロックしてから弱点にPAを撃ちこんだら2発で死んだ。


「あれぇ!? 何か自分以上の力が出せるんですけど!?」
スタージュン様じゃないレイマールさんがWikiのカタログスペックを見てみるとHclはRmlよりHPが270、攻撃力が170ほど高かった。


レイマールさんが無言でTVをつけるとディケイドがやっていたので「おー、ゲゲルとか懐かしい」 「この主人公グロンギ語上手いね」
と、次回予告まで見てから布団を被って二度寝した。肌寒い日曜の朝の事であった。


こうして超火力を手にしたレイマールさんは調子に乗ってレアを掘りまくった。
目当てじゃないレアが出た時には掲示板に出品して積極的に交換した。N59E5ラーヴァテイン、N52B45E4ルズパリアス、N22M52D31E3ネイダリール、
積み上げられた☆7武器の数々を見たレイマールさんはにっこり顔になった。いずれもSHの敵に通常攻撃で200とか300とか出せる神器である。


もちろんRa装備以外も出土した。全武器中法撃力2位のホワイトディザスターを掘った日には渋谷の東急ハンズに行って片倉優樹っ面で灰色アフロを購入したし、
初めて掘ったモルゲンロートがM23D53E3だった日にはその場で装備に合うようGTロボの色をプラカラーで塗り替えた。


こうしてレイマールさんは火力的には何の不満も無くなった。
「すーごーい! Raの火力が凄い!」って北斗のガチ撮り実況風に言われるのが夢だったけど、それもほぼ叶ってしまった。


全てのマップでそれなりに戦える武器とキャラが揃ってしまった今、これ以上このゲームに時間を費やす必要はあるのだろうか。
スタッフロールはとうに流れていた。魔王を倒してしまった勇者は120時間の放浪の末に、自分の物語が終わっていることに気が付いた。


「とても……楽しい夢でした」
どこかで聞いたような台詞を呟きながら、赤い軍服の銃使いは、二度と戻れぬ暗闇の中へと消えて行った。




「それで、レイマールさんはどうなったんです?」
FFCCEoTでセルキー♀に書生の服を着せてキャッキャしてましたよ」
「野郎ぶっ殺す!」


ベル・デルが8時間後のドラえもんみたいな剣幕でハンターズギルドから出て行くと、クエストカウンターのお姉さん(黒髪ロング眼鏡)は
「もう大丈夫ですよ」って言った。すると隅っこで最終皇帝っ面で飲んでたフォニュームが灰色アフロを外すとレイマールさんだった。


「戻ってこなくても良かったですのに」
「楽しくないゲームを120時間もやるはずがないでしょう? それにまだM25SEミズーリもフウマシュリケンもアルアジーフも掘ってないんです」


そうしてマッチングした仲間たちと「よろしく!」と声を掛け合いながらフィールドに駆けだしていくレイマールさんの背中を、
エストカウンターのお姉さん(隠れ巨乳)が楽しげな様子で見送っていた。




つづかないけどつづく。
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