放課後トロイメライ：壱乗寺かるた 富士見ファンタジア文庫
- 作者: 壱乗寺かるた,日吉丸晃
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2008/06/20
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 87回
- この商品を含むブログ (17件) を見る
富士ミスは死んだ！ もういない！*1
だけど、読者の中に、編集部の人たちの中に、富士ミス出身作家の中に、一つになって生き続ける！
レーベル自体がミステリー！
LOVEも地雷も名作も、楽しめたならそれでいい！
キャッチフレーズは！ LOVE！ 合言葉は！ LOVE！ 変わらぬ魂はここに生きている！
壱乗寺かるた、魔界転生により富士ミスより推参！
最後の最後で筆が滑ってイラストが日吉丸晃から石川賢になったので皆が慌てて回収に走り、改めて綺麗なトロイメライが全国の書店に並んだ。
えー、「さよならトロイメライ」改め「放課後トロイメライ」の1巻です。
富士ミスからの移籍でちょっとハイになったのか、帯の表側だけで
「初心者大歓迎（若葉マーク）」 「妄想炸裂学園ラブ・コメディ」 「あなたのハートをつんつんしちゃいます」 「いくぜファンタジア文庫20周年」
ってのはちょっと密度高すぎだと思うのです。怪しい露店みたいです。そして裏側には富士ミス読者からの喜びの声と「全国から絶賛の嵐！」の文字が入ってて
これはどう見てもトロイメライ専用に作られた帯ですよ角川の発売予定表では一番下に載ってたのに凄い待遇ですよ色はうっすらピンク色で背表紙側の「ファンタジア文庫」
のフォントまでめっちゃファンシーですよ。何となくなんですけど、この帯は富士ミス編集部からトロイメライに贈られた精一杯の応援に見えるんです。「頑張れ！」って
書かれたタスキとか寄せ書きみたいな。そして本文では逆に作者の方が「キャッチフレーズは！ ラブ！ 合言葉は！ ラブ！ 変わらぬ魂はここに生きている！」と
富士ミスに向けて万感の思いを託したエールを書いてるんですよ。この帯を巻かれた本を見ていると温かいものを感じます。本当にいいレーベルだったんですよ。富士ミスは。
内容自体は帯にあるようにまさしく初心者向けです。トロイメライは本編7冊に短編集1冊を有する富士ミスの代表作品のひとつですが、それらを読んでいなくとも
この巻を読めばだいたいの雰囲気は掴めるようになっています。トロイメライはほぼ全編が主人公である藤倉冬麻、通称トーマスによるハイテンションかつネタ満載の
一人称で綴られているので非常に癖が強いのですが、一度はまってしまえばその文体がもう大変心地よくてつい「トーマスは俺の嫁」 「いや都の嫁だろ」とか
言いたくなるくらいの魅力を秘めた作品なのです。トロイメライにハマれる人間がトロイメライを読まないのは絶対に一生モノの損失ですので、今まで存在を知らなかった人も
知ってたけど見送ってきた人も、どうかこの機会にこの1冊だけでも買えとはいわずにせめて冒頭の10ページ、いやプロローグに毒は無いので第一章の数ページだけでも
本屋でパラパラ捲ってみてもらえれば、いちファンとしてこれに勝る喜びは無いのです。読める人ならそれで落ちますから。
かくいう自分は約一年半ぶりにトーマスの一人称を読めて超幸せです。相変わらずネタの濃度が無駄に濃いです。ぱんつぱんつ詐欺*2とか馬鹿じゃないですか。（超褒め言葉）
そして八千代ですよやっちんですよ真霜八千代ですよ。トーマスの隠れ義妹にしてあまりにデレすぎて裏返ったツンデレ。前巻まではもうトーマスにその気があったら
入籍寸前くらいの超デレデレ具合を見せてたんですけど移籍の反動か、はたまたカッパ寿司で寿司に溺れた女騎士が悪漢に逆襲するような心境なのか
デレデレの中にちょっぴり尖ったナイフのようなツン混じりのハイブリッドやっちんとなっております。トーマスがデレさせるだけで餌やらないから！
まあ考えてみればここからトロイメライに入る人にとっては最初からデレデレではツンデレの味わいが半減するわけでこれは良い判断だと思いました。自分としても
1巻当初のツンが100%だった頃の八千代*3を見ているようで懐かしかったです。やっぱりツンデレにはツンが要りますよ。
カラーページの表情と台詞はデレだけのツンデレだけでは決して成し得ない領域に入ってましたし。よく見ると少し涙ぐんでるんですよね、あれ。
あとカラーページと言えば都が読んでる新聞の内容が酷かったです。八千代は何笑顔でそんなインタビューに答えてるんですか写真の目を黒い線で隠しても
本名出てるじゃないですか本番とか相手男優とか何ですか長峰さんそれに何より絵師と作者自らそれをネタに使いますか無駄に連携取れてるのは素晴らしいと思いますけど！
そして2巻は8月だそうです。刊行ペースから壱乗寺かるたの本気と編集部の期待を感じます。……もしかしたら売れるかも？
巻末の次回予告からしていよいよ2巻目からクライマックスですよ。富士ミス時代からの読者にとっては9冊目なんですけどね！
