モンティニーの狼男爵:佐藤亜紀 朝日新聞社



時代はフランス革命前後。舞台はパリから離れた小さな村で主人公はそこの領主。内容は彼の半生。2ページ見ただけでこれは面白いと感じたので読んでみた。
早くに父親を亡くして厳格な母親に育てられてその母親も彼が10かそこらの時に死んでしまって独りになって
屋敷に押し掛ける弁護士やら自称親戚やらを後見人の叔父が追い払ってくれて厳しい母親が死んで自由にはなったけど寂しくて
夜な夜なあてどなく森を彷徨って狼に出会ったりその習性を覚えたりして気がついたら辺り一番の狩人になってたり気晴らしに
ヴォルテールとか読んで哲学にハマってみたりしたけどすぐ飽きたりそうこうしているうちに結婚させられることになったんだけど
嫌々会ってみたその娘に一目惚れしてめでたく結婚して村で笑い話になるほど男爵は嫁さんにベッタベタで狼狩りなんかもして良いトコ見せて
そのうち子供ができるんだけど……という感じにつつがなく進行しつつここ以降はネタバレだけど微妙にあれこれ火種を孕んで男爵にとっては
七転八倒波乱万丈、いろいろ苦しいことや辛いこともあるんだけど、読み終わった後はもう「めでたし めでたし」という締めくくりが相応しいような
そういう安心して読める古き良き感じの昔話。ちょっとアレンジして尺を削れば絵本にして幼稚園児に読み聞かせができそうなくらいに単純かつ
一本道の筋書き。それでいて面白い。


作者の佐藤亜紀って何者だと奥付けの経歴を見たら日本ファンタジーノベル大賞の受賞者と判明。
ああ酒見賢一森見登美彦の同輩か、どうりで面白いわけだとWikiってみたら沖縄作家の池上永一にハッタリ信長の宇月原晴明、僕僕先生の仁木英之まで大賞受賞者で吹いた。
全員自分好みの超面白い本を書いてくれる人じゃないですか。この分だと他の大賞受賞者も面白いんだろうなとさっそく全員の名前と受賞作をメモった。いやあ読むのが楽しみだ。