10月1日では遅すぎる:フレッド・ホイル ハヤカワ文庫



初めて行った図書館で偶然見つけて「ああ、これが元ネタか」とか「ラスコールじゃ! ラスコール=オセロ(11歳ver.)の仕業じゃ!」とか思いつつその場で読んだ。
時間の狂った世界で音楽家の主人公がバード技能をフル活用して頑張る話。クライマックスが音楽対決という小説は珍しいと思う。相手が相手だからなお凄い。
古代ギリシャの神殿に現在からピアノを持ち込んで「スピーカーを持たない文明では嫌でも音響技術が発達する」とかさらっと書いちゃうし、
主人公は全編通して謎の究明そっちのけで作曲と演奏しかしていないのにそれがきっかけで友人の物理学者と同じ真相まで辿り着いてしまう。
作者の音楽好きがこれでもかというほど伝わってきて知識が無いのに充分楽しめた。書き手の専門知識を中心に据える小説はかくあるべきだと思う。