月に繭 地には果実:福井晴敏 幻冬舎



いち富野監督ファンの手によるターンAガンダムのノベライズ。
作中における死者の数が原作の10倍(メインキャラは3倍くらい)を余裕で超えていてそれだけ聞くと表面的には黒富野が大好きな信者の暴走と
見れなくもないんだけど、実際に最後まで読むと原作が持っていたというか監督がやろうとしていたであろう肯定とか再生とか希望とか癒しとかを
きっちり盛り込んであるのが流石プロというかファンの鑑というか原作をよく理解しているというか、
わかった上でここまではっちゃけるのっていっそうタチ悪いんじゃね? というか、とりあえずの読了感はそんな感じ。


人気作品を何作も書いている人だけあって内容の質の高さは折り紙付き。
分量は上下二段組のハードカバー600ページ。ロランの地球降下からハイム家に雇われるまでの過程も含めた原作全50話分に相当する長さのストーリーを
ほぼ凝縮することなく1冊で語りきっています。また描写がいちいち的確で原作やガンダムを知っている人なら地の文を読んだだけで脳内にビジュアルイメージが
浮かぶでしょうから通して読めば原作アニメ4クール分を一気に視聴したかのような、でも時間的には半分くらいで済んでいるという不思議な感覚を味わえるかと。