オーディンスフィアと「ニーベルンゲンの指輪」との類似点など



というわけで調べてみました。参考資料は石川栄作「『ニーベルンゲンの詩』を読む」。
既に誰かがやってる気がしないでもないのですけど、いろいろわかって嬉しかったので語らせて下さいな。
後半に1行だけ大きなネタバレを隠してありますので、そこはクリアした人だけ反転してくださいまし。


簡単にまとめますと元々5.6世紀にブリュンヒルデジークフリード恋物語であるブルンヒルト伝説というのがありまして、
それを元に13世紀頃とある詩人が「ニーベルンゲンの歌」を作り、そして19世紀、ジークフリード伝説に興味を持った
かのワーグナーが26年をかけて「ニーベルンゲンの指輪」四部作を書き上げたわけです。
当然それぞれ登場人物の設定やストーリーは違っておりまして、まあ大筋は2人の悲恋で間違いないんですけど
神とかワルキューレとか終焉とか持ち出してきたのはワーグナー先生ですので、興味のある方はとりあえず「指輪」から調べてみるべきかと。
ではまず「指輪」の大まかなストーリーを。ゲームとあまり関係ないエピソードは大幅に端折っていますがご勘弁をば。

ライン川の底にある黄金から作った指輪は持ち主に無限の力を与えるという。これを知った地下の国の王、小人のアルベリヒは
水の精から黄金を奪い取るが、それには愛を捨てる必要があった。そうして指輪は完成するも、神々の長ウォータンに奪われてしまう。
絶望したアルベリヒは「その指輪を持つものに死を与えよ」という呪いを残して去った。その後指輪は巨人族ファフナーが持つところになる。


ウォータンは指輪を奪還すべく地上に降りて妻を娶り、双子の兄妹、ジークムントとジークリンテを生ませた。彼らの間に生まれるであろう
英雄に指輪を取り戻させようとしたのだ。2人が結ばれた後、ジークムントは決闘をする事になる。ウォータンは息子に味方したかったが、
現在の妻であるフリッカに説き伏せられてそれができないでいる。父の苦悩を知ったワルキューレブリュンヒルデはあえて命令に背き、
ジークムントを救おうとするも彼は死んでしまい、残されたジークリンテを連れて逃げる。
ウォータンは父に背いた報いとしてブリュンヒルデに眠りの魔法をかける。


森の鍛冶屋、ミーメの元に逃げ延びたジークリンテはジークフリードを生んですぐに死んでしまう。
成長した彼は竜に姿を変えた巨人ファフナーを殺し、指輪を手に入れる。その折竜の血を飲んだことで小鳥のさえずりを理解できるようになる。
彼は鳥の導きに従い、ブリュンヒルデが眠っている岩山へと向かう。


ウォータンはかつての妻であり知恵の女神であるエルダを地下から呼び起こして教えを請うが、回る車はもはや止められないことを知る。
そこへ通りかかったジークフリードと決闘し、槍を折られてしまう。ジークフリードは岩山でブリュンヒルデを目覚めさせ、愛というものを知る。


ジークフリードは指輪を妻に渡して新たな旅に出るが、アルベリヒの子ハーゲンに騙されて忘れ薬を飲まされてしまう。
彼は命じられるままに変装してブリュンヒルデの元に赴き、指輪を奪い取り彼女自身も連れ去るが、結局は殺されてしまった。
全てを知ったブリュンヒルデは彼の遺体を火で焼くように命じ、自らもその中に飛び込む。
やがてその炎は天上の城にまで燃え移り、神々と英雄たちを焼き尽くしてしまう。

オーディンスフィアをプレイ済みの人なら要所要所に元ネタを発見して楽しめるかと。
ブリュンヒルデの眠りはそのまんまとして、ヘタレのウォータンが武器壊されたとか、終焉の表現が回る車とか、
鳥に導かれるジークフリードとか、竜の血でパワーアップとか、指輪にかけられた呪いとか、ブリュンヒルデと炎とか。
で、これ以降は原作との対応に関する自分なりの解釈です。間違ってましたらどうか生暖かい目でご指摘をお願いします。


まず登場人物の対応は
ブリュンヒルデ=グウェンドリン
ジークフリード=オズワルド
ウォータン=オーダイン
アルベリヒ=バレンタイン王
で間違いないですな。指輪はティトレルの指輪であり、結晶炉コルドロンなんでしょう。
3匹の竜は、ワーグナーワーグナー先生そのまんまですな。ハインデルはプリンセスクラウンからの登場だそうで、
竜については結構アバウトに名前を決めている気がします。ベリアルもおそらくはそんな感じでどこからか取ってきたんでしょう。
原作ではどのバージョンの話でも死に別れてしまう2人が終焉を生き延びるというのはなかなか憎い演出かと。
ベルベットの元ネタは上のストーリーでは省略したフレイ神という話も聞くんですけど、双子の兄妹というネタは
ジークムントとジークリンテからとったんだと思います。
あと「指輪」でない方のブルンヒルト伝説ではジークフリードは孤児であり、森の妖精の鍛冶屋に育てられたとあります。
妖精、というのが上の話と違うポイントで、ブロムさんは実はけっこう歴史あるキャラクターだったのですよ。
そして最初の指輪の主であり呪いをかけるアルベリヒがバレンタイン王だというのは間違いないのですが、注目すべきは
彼が小人であるということ。おそらくはプーカに対応しているかと。きちんと原作に基づいた設定だったんですな。


というわけで、元ネタ探しというのは思っていた以上に楽しい作業でした。
考察のやりがいがあるシナリオって素晴らしいと思うんです。例えば昔のガンパレとか。
アトラス繋がりで九龍の古事記ネタも当時調べていれば同じくらい楽しめたかもしれませんな。今更ながら少し惜しい気がします。