僕僕先生:仁木英之 新潮社



舞台は古代中国。親の財産で一生食うに困らないから、とぶらぶら生活していた青年がある日父親から
「近所の山に仙人が住み着いたから礼物持ってって不老長寿の秘訣でも聞いて来てくれ」と頼まれて出かけて行くも
そこで会ったのはどう見ても十代半ばの少女で……というのが冒頭部分。
酒見賢一が切り開いた「オリジナル古代中国」という分野にやっと後継者が現れましたよ。「後宮小説」とはまた
違った感じに面白い。話の骨子は堅実なボーイミーツガールながらも仙人の僕僕先生は飄々とした良いキャラだし
主人公の成長具合が見てて楽しい。きっちり資料を調べているらしく当時の中国の描写もしっかりしている。
これがデビュー作なのだけど、これが書けるなら力量はぜんぜん問題無くて後は売れてくれるといいなと思う。先輩分の
酒見賢一は無駄に上手くて面白い作品をいくつも書いてるのに徹底的に目立たない、というどこかで聞いたような属性を持つ人なので
この人にはこれから二の轍を踏まぬような話題作を書いて欲しいところ。