狼と香辛料



電撃文庫2月の新刊。作者は支倉凍砂氏。
銀賞受賞作なのだけど、個人的には大賞でもいいくらいの出来。
新人でありながら自分なりの作風をきっちり確立できてる事は評価に値すると思います。


ライトノベルだけでなくゲームでも言える事ですけど、長く接してると名作良作傑作と評価されてる作品は
あらかた消費し尽してしまう訳で。そうなると、生半可なものでは満足できなくなってしまうのです。
その渇きを満たすには、部分的にでも過去の名作を上回る圧倒的クオリティか、もしくは
既存のジャンルに捕らわれない作風なり個性なりが必要な訳で。
電撃hp40号、短編小説賞の審査員総評で「破壊力」「尖った」「独創性」と言われてるのはまさにこれ。
多少荒削りだろうと、その人にしか作れないものはそれだけで価値があるのです。


そして高いクオリティを持ちつつ尖ってるのがこの小説の凄いところ。
単純にホロ萌え小説としてのベクトルだけで既存の萌え分野の水準を突破しているばかりか、
20代商人を主人公に据えた交易話はそのジャンル選択自体が十分新鮮でありながら、その内容も
確かな知識と下調べによって構築された堅実なストーリーと娯楽小説としての楽しさを兼ね備えていた訳で。
面白かった、絶対お勧め、と一言で表現するのは簡単だけど、それだけでは済ませられないものがあったのです。


あと最後に、P249のマールハイトさんが個人的にツボでした。
理想の商人キャラを見せてもらった気分です。