殺×愛1 ―きるらぶ one―



富士見ファンタジア文庫11月の新刊。作者は風見周氏。
何というか、凄いものを見た。基本が鬱なラブコメ。略して鬱コメ。
角川スニーカーの系譜を踏む正統派の鬱作品でありながら、同時に富士見ファンタジア系のラブコメとして成立してる。
文句なしにラブコメ小説に分類できる。でも鬱。鬱とラブコメ、夢の悪魔合体。しかも成功してるし。
フランケンシュタイン作ろうとしたらパーツの相性が最高で普通の人間ができちゃった、という感じ。不自然なのに自然。
一人称で主人公が鬱なのだけど、この作品の欝は切れ目無く全体を覆うガスのような鬱。ラブでコメってても空気は鬱なのが最大のポイント。
鬱といっても読んだらトラウマ確定の致命的な鬱では断じてなく、話を彩る面白さとして許容できるレベル。
むしろ鬱がストーリーやキャラの魅力を十二分に引き立ててる。この味は欝でしか出し得ないし、たぶん前例も限りなく少ない。
とどのつまり、名作。ラブコメというジャンルに殴りこんだ道場破りにして新境地。50万部級の潜在能力は十分あると思う。
それと本編とあとがきの落差が凄い。というか誰なんだアンタ一体。本文書いた人出せ。
あんまり楽しいので作者のブログ『形而上学奇跡』も読んでみた。語尾がエロスの人とジャッジの人が面白かった。仲良いなあこの人達。
第0巻も既に出てるらしいので、そっちも探してみようと思う。あとこの作者の他の本も読んでみたい。