雛瀬樹



ツンデレという概念がある。
多分既にキーワード化されているだろうから、詳しくはそちらを見てもらいたい。
彼女は面白いタイプのツンデレだ。


ゲーマーズヘブン!」という漫画がある。
ゲーム好きな子供なら誰でも一度は考えたであろう、「ゲームの中に入りたい」という
夢をそのまま形にしたような漫画だ。


その漫画の登場人物であるところの彼女は主人公をとても嫌っている。
仲間と楽しく話している主人公を見て苛立ち、策略を駆使して退学に追い込もうとし、
挙句の果てに殺そうとする。
何故そんなことをするのかと問われて答えた理由、「私はおまえの事が嫌いなだけだ」


ここまであからさまなのは最近珍しい。好意の逆は無関心。
好きな子にわざとちょっかいを出す心理。本当に嫌いならわざわざ関わったりはしない。
こいつは今ツンだけど、いつかはデレになるんだろうなあ、と読んでる側は思うわけだ。


そして案の定そうだった。
多少ツンの内容が過激だが、100%ゲーム脳な底抜けのバカ(褒め言葉)である主人公は
嫌われようと憎まれようと気にしない。どこまでも素直で真っ直ぐに向かい合い、
ついに彼女の心を開く。


こぼれるような笑顔。あれだけ嫌いだと公言していた主人公を友達と呼ぶ。
よっしゃデレ来たデレ! と誰もが思った直後に彼女は退場する。


ツンデレの有名所であるスクールランブルの沢近を見ればわかるように、
ツンデレキャラはだんだんデレの部分が増えていくのが王道だ。
彼女も放っておけばそうなっただろう。だが、それができないまま消えてしまった。
言動の大半は殺気混じりのツンだった。
本気で主人公を憎んでいるという設定でも別に違和感無いほどだった。
しかしだからこそ、彼女が最後に少しだけ見せたデレはとんでもなく凄かったと思う。