多崎礼「煌夜祭」、あるいは文章で構築された寄せ木細工について



煌夜祭 (C・NOVELSファンタジア)

煌夜祭 (C・NOVELSファンタジア)



物語の中で複数の物語が語られる重層構造。
語られる物語自体の質やそれぞれの関連性による面白さは当然一級品だったのですけど、あえて自分が一番驚いたところを述べるとしたら
物語を展開する(圧縮されたファイルを解凍するような意味での)手腕の見事さです。
とにかく構造に無駄が無い。話の中のどの部分も何かしらの物語を構成する要素になっていて、読んでるうちにそれがどんどんどんどん
本の中から出てきて組み合わさっていくのですよ。まるで飛び出す絵本みたいに。
それでもって読み終えてページを閉じるとそれらがいっせいに折り畳まれて「え? この本の中にあんな体積のブツが詰まってたの?」って言いたくなるのです。
滅多にない読書体験だったので本好きでまだ多崎礼を知らない方には是非ともお勧めしたいところ。


あと表紙絵と裏表紙とカラーページはたった3枚であの世界のイメージを読者に印象付ける良イラストだと思うのです。
読者を騙す目的でなく、純粋に作品のビジュアルイメージを喚起するためのイラストって感じがして新鮮でした。
だから決して表紙絵の怪しい仮面の人を見ても「何この戦地調停士*1」 「上遠野村に帰れ」なんて言ってはいけませんよ!?
読み終えてから見返したら絶対めっちゃ後悔しながらごめんなさいって言いたくなりますから!(涙目)
殺竜事件 (講談社ノベルス)

殺竜事件 (講談社ノベルス)

*1:上遠野浩平殺竜事件」のEDって人に凄く似てると思った。今は反省している