戦闘城砦マスラヲ Vol.3 奇跡の対価:林トモアキ 角川スニーカー文庫



表題作はもうヒデオ凄えー! これこそ主人公! 何の特殊能力も無いのに気力と意地だけで必死に頑張る姿に
ヒロインも思わずフラグ立てちゃうのも凄いわかるしああ……もう、HIDEO! って感じだったのに第2話冒頭で
てめええええー!!! とかあの感動を返せー! とか叫びたくなるのがまあ、これもまたヒデオ。元がああだからこそ
頑張りモードが栄えるわけでそれはわかるけどやっぱりヒデオ自重しろ、とわかっていながら突っ込みたくなる。このお約束具合が心地良い。


第2話は第2話で角川スニーカー文庫史上最もゲームネタの比率が高い49ページ。
会話の中でLSDやゆめにっきやかまいたちの夜2が話題に出るだけでなく、対戦相手の元ネタも箱○のアレで
ヒデオが使った対抗手段はPSの懐かしすぎるアレという話の軸自体がゲームネタで構成されているという点を評価したい。
最初読んだ時はそこまでガチだと思わなかったから
「"○ ○○○○○  ○○○○○○○" どこかで聞いた事が……ってどう考えてもアレしかないけどまさかなあ」
で、ページめくったらアレですよ。本当に林トモアキグッジョブ。ここまでのゲームネタはこう締めるための伏線だったのかと
そう理解した瞬間、この短編が自分の中で神となったのです。ゲーム好きのラノベ読みで未読ならこの巻からでも十分読めますよ?


で、第2話第3話が共に軽いノリの話でこの作者の溢れ出すシリアス分はどこへ行ったかというと
それらは全て書き下ろし分に注がれていたのです。(ガンガガンガの説明文風に)
切った張ったのガチバトルや復讐といったシリアスパートの担当としてリュータを影の主人公に持ってきたのは上手いと思う。
自然、この作者の持ち味である過剰なギャグとシリアスがちょうど良い具合に分配され、しかも必要な時にはヒデオがシリアスやったり
リュータがネタに走ったりしてその落差で燃えや笑いを生み出すことが簡単にできるという。好きな作家がぐんぐん成長していくのは
読者としては二重三重に嬉しいのでもっと頑張れ超頑張れ。新作のミスマルカ興国物語にも期待してます。