江藤淳氏の著作、『夏目漱石』より

何故なら、これは何らかの意味でぼくら自身の姿であり、
人が自分自身の姿をその中に認め得る限り、文学作品は永久に新しいからである。

作品と私生活の両面から漱石という人間を分析した本。その徹底ぶりはむしろ解剖と言った方が近いかも。
内心まで踏み入ったこの手の分析をされるのは小説家や芸術家の特権だと思ったり。
これが例えばエジソンだと、その発明品から深層心理を解明するのは小説や美術品の場合よりずっと難しいだろうし。


大塚英志さんがこの作者を尊敬してるっぽいので読んでみたのだけど、なかなかいい文章を書く人だと思った。
1度でいいからこの本を本人に読ませてみたい。どんな反応するんだろ。


人の一生の完全な分析は、その人の死後にしかできない。
それを読むに最もふさわしい人間にだけは、決して読んでもらえない。ならその文は誰のため?