ルクス・ペイン その4

  • 西条アツキこと小さな王様がどっきりビキニどっきりビキニ言ってる間に一月以上の時間が経過した。現物を見てひとまず満足したのでそろそろ物語を終わらせようかと呟いて小さな王様こと西条アツキは如月市へと帰還した。久々のOP曲に合わせてとても格好良いダンスを踊ってからセーブデータをロードすると世界に色が戻り、止まっていた物語が再開された。
  • 本部からロリが遊びに来た。いきなり西条に抱きついたり友人たちの前で妻ですとか言ったりして主人公LOVEな萌えキャラっぷりをそつなくアピール。実はあと1話で最終回なのでキャラ立てに必死である。いつまでもただのロリで終わるものかよ。
    • そしたら犬を連れたロリがやってきて不敵に笑うと説明書のP47を開いて見せた。犬ロリの中の人は能登であった。オーディンスフィアメルセデスの人であった。
    • 本部のロリはいったん電源を切ってカードリッジを無限のフロンティアに入れ替えてから邪鬼銃王と一緒に踊ってる人を指差した。気まずい沈黙が落ち、やがてどちらからともなく握手と笑顔が交わされた。
  • それはともかく街の様子が変だと夢にうなされた本部のロリが言い出した。確かにBGMも変だったし、まるで誰かが街の人たちを操って悪事を働こうとしているような気配がした。
    • そう言えばまだ怪しい奴が一人残っていたと西条が気付いたところで場面転換してラスボスが登場し、一枚絵と共に邪悪な思念やサイレントを街中に流し込んだ。ついでに部下を送り込んで主要施設を一斉に掌握した。
    • 急激に跳ね上がる危険度ゲージ。西条が毎回酷い演出であっさり倒してるから軽視されがちだけど、元々サイレントは一歩間違えば数十万人規模の犠牲者を出しかねない超危険なマインドハザードである。
    • 西条が友人達の安否を気遣っていると、ここが己の見せ場だと考えた本部のロリが能力を全開にして全員の現在位置と直面している状況を割り出した。案の定、皆あちこちでえらい目に遭っていた。
    • 力を使い果たした本部のロリは「ロリー!」って叫んで駆け寄る西条に弱々しい声で「私の名前はナツキ・ヴェネフスカヤです」って言った。覚えにくい上にナツキって表記だと西条アツキと被るややこしい名前だと西条は思ったけど口には出さずに「ナツキー!」って言い直すと自己アピールを完遂した本部のロリは満足げな顔で意識を失った。
  • 友人達を助けるために西条はまず手近なテレビ局に向かったけど建物の中はフル武装のテロリストで一杯というガンクライシス時空だった。
  • 「おいいぃぃぃ!!! ジャンル違うだろこういうのは真神学園の転校生の担当だろうがよ!?」とテンパる西条。
  • そこへ「最後だからめっちゃ活躍したいです!」って額に書いたリュウ・イーがやってきて「お前の能力で削ってたら間に合わないから俺に任せろ」って満面の笑顔で言いつつ物凄い勢いで建物内に単独突入した。
    • 西条が慌てて後を追うと心を潰されたテロリストがたくさん転がっていた。上の階から銃声の合間に「リュウ・イー24歳! 趣味は拳法の稽古です!」って聞こえてきたので駆けつけるとやはり全員倒れていた。リュウ・イーがいると仕事が楽だなあと西条は思った。主人公の彼には出番を求めるサブキャラの気持ちなど理解できないのだ。
    • 屋上では調子に乗ったリュウ・イーが絶頂期のDRさんごっこをやっていたので「お前のリュウって漢字は劉だろ? ドラゴン違うべ」って西条が突っ込んだらリュウ・イーは無言で説明書のP43を開いてボールペンで名前の漢字を龍って書き換えた。格好つけたい執念のなせる業であった。
    • 「でもそれだとロン・イーになるんじゃ」って突っ込もうとした敵が言い終える前に心を潰されて戦闘は終了した。助けられて礼を言う友人たちに修正液持ってないですかって必死に聞いていたのが印象的だった。
  • 次のターゲットは占拠された警察署だった。サイレントに感染した警官たちがバンバン発砲してくるという逆「ザ・警察官 新宿24時」空間であった。
    • 「仲間捕まってるけど流石に警察にカチ込むのはヤバくね?」と西条が振り向いたらリュウ・イーは劉家龍っ面で桐生一馬を拷問しながら中国っぽい薙刀をぶん回している最中だった。龍が如く時空の先触れだった。
    • 10秒後、正面玄関を守っていた警官たちが見たものは眼帯して安全ヘルメットを被って長ドスと薙刀持って全身から紫色のオーラを出してイントネーションのおかしい日本語を叫びながら人間離れした移動速度で突撃してくるチャイニーズマフィアだった。慌てて撃った銃弾は全弾スウェーで回避された。
    • たちまち阿鼻叫喚の渦に叩きこまれる警察署内。片っ端からヒートアクションで心を潰して回るリュウ・イーの後ろでジェラルミンの盾を構えて付いていく西条。大半の敵はリュウ・イーが何とかしたけどたまに自分の方に向かって来る奴は盾の窓からこんな感じに目と目を合わせてシグマで心を削り倒した。
    • かくして署内の感染者たちは全員鎮圧された。救出された署長が帰り際に「さすがは老虎。かつて1000体ものサイレントを倒した男」とか言い出したので西条は「え、あれマジだったの!?」って顔になった。
  • 最後の目的地は病院だった。外側から押し寄せてくる暴徒や内側にも発生する感染者から取り残された患者たちを守らねばならないというシリアスかつ難易度の高いステージであった。
    • 怯える友人たちを尻目にバイオハザードにしようかザ・ゾンビvs救急車にしようか西条とリュウ・イーが相談していると奥から1人の入院患者が現れた。それはちょっと前にリュウ・イーが格好付けのために問答無用で戦いを挑んだ転校生だった。
    • 「ほう。俺が喰らってやったのにまだ生きていたか」自分も死にかけていた事を棚に上げて偉そうになるリュウ・イー。それを見た転校生は一瞬凄く嫌そうな顔になったけどお願いします協力して下さいって言った。
    • リュウ・イーはグリーンハーブを口に咥えてマグナムに弾を装填しながら「フッ、足を引っ張るなよ」と言い放った。西条はハンドガンを3点バーストに設定してから念の為にインクリボンを消費してセーブを行った。
    • 「あんたランスロットはどうしたんだよ! 闇の力とか言ってただろ!?」根っからのルクス・ペインっ子である転校生は2人のバイオハザードごっこについていけず困惑気味であった。初心者はこれを使えと渡された無限マシンガンを持て余しているとサイレントに感染した人が目の前に躍り込んできた。
    • 「……っ!」とっさに銃口を向けた転校生だったが、思い直して自分のシグマでサイレントを除去すると感染者の人はにっこり笑って「ありがとうございます」とお礼を言って倒れた。転校生は何かに気付いたような顔でマシンガンを投げ捨てると他の感染者の所へ走った。あの2人に任せたら絶対駄目だ。
    • リュウ・イーは感心した様子で「あれならフォートでも十分やっていけるな。あ、フォートってのは俺達が所属している組織の名前でサイレントの脅威から人類を守る砦って意味です」と誰にともなく呟いた。
    • ここはもう自分がいなくても大丈夫だと判断した西条はこっそり病院を抜け出してまだ行っていない場所の捜索に取り掛かった。犬を連れたロリが見つかっていない。そこにラスボスがいると思われたからだ。
  • そこで画面が暗転して犬ロリとラスボスが対峙しているシーンへと切り替わった。唐突にソロデビューの機会を与えられた犬ロリはとっておきの笑顔で「神代ナミ11歳! 趣味はメロディとの如月探検です! メロディは飼ってる犬の名前です! あなたは何者!?」と台本の台詞に長すぎるアドリブを付け加えて叫んだ。本来ならばNGモノだが既に西条とリュウ・イーが好き放題やっていたのでシナリオ担当の上田清隆さんは半ば諦めの表情で続きを促した。
    • ラスボスは「自分の目的は犬ロリの力を利用して悪事を働くことです」って言った。そこからいろいろあって西条が駆け付けた時には何か凄い姿になったラスボスが自分は神だとか言い出してたのでロケットランチャーを撃ち込んで倒した。上田さんは無念の涙を流した。
    • 犬ロリはいろいろあったせいでとても悲しんでいたので西条がOPの最強に格好良いダンスを踊って慰めようとしたらこんな感じで大笑いされたのでシグマで削って無かった事にした。
  • EDが始まった。如月市のサイレントは一掃されたけど、西条アツキとリュウ・イーにはまた次の戦場が待っている。それに転校生は役割を果たしたら去っていくのがマナーだって魔界学園にも書いてあった。
    • 正体を知られるとマズい上にちょっと今回は調子に乗って派手にやり過ぎたので組織の処理班が関係者全員の記憶を念入りに消去した。
    • 西条アツキは誰の記憶にも残らず消える。一般人はサイレントなんて知る必要はない。知れば人として幸せには生きられない。だから忘れてもらう。偽りも裏切りさえも彼は選ぶ。ルクス・ペイン、聖なる痛み。
    • 西条アツキ17歳がそんな事を考えながら遠くに見える街を眺めていると背後でワゴン車が急停止するような音がして振り返ると「御堂アキラ17歳! 趣味はトレーニング! 武道やってるクラスメイトだ!」 「野崎ミカ17歳! 趣味はボーリングとカラオケ! テレビ局で見習い記者やってます!」 「宇波リョウ17歳! 趣味は古書収集と語学! 君のアパートの1階の古本屋の店主だよ!」 「私の名前はヤンデレじゃないですから! 美術部の神代ヤヨイ17歳! 趣味は書道です!」 「成瀬シンジ17歳! 趣味はハッキング! また一緒にネットしようね!」 「山瀬ルイ17歳! 趣味は化粧品集め! 占いとかやってたけど言及されませんでした!」って皆が次々に叫びながら飛び出してきた。
    • 予想外の展開に呆然となった西条が「そんな風に台本を無視してアドリブで動くのはよくないと思うんだ」って言ったら「お前が言うな!!」と全員からもみくちゃにされた。シナリオ担当の上田さんが苦笑いしながら合図を出すと騒ぐ彼らの背景がセピア色になり、スタッフロールが流れ始めた。

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