.hack//G.U. Vol.3 ハロルドの元型:浜崎達也 角川スニーカー文庫



やはりノベライズは地の文ですよ地の文。
残った碑文使いの面子とかオーヴァンの目的とか、原作を遊んだプレイヤーにとっては既知の事実で
いわば話の中核がネタバレ済みであるのと同義の状態なのに、地の文によってハセヲを始めとするキャラクター1人1人の内面が
ゲームとは比べ物にならないほどの情報量で再描写されているのがたまらないのです。全員が一段階リアルになったというか、
血が通う、血肉を与えられたという表現がぴったりで、ゲームと同じ材料を同じシェフが料理しているのに味付けと調理法の違いで
全く別物になっているのですよ。単体でも十分美味しいけどその事実を知っているとシェフの手腕と趣向にいっそう感嘆できるという。


話を面白くするために、ストーリーや設定の面でもかなり大胆な変更をやってます。
アトリとの対比のために榊さんのリアルがアレだったり、オーヴァンのいた本の部屋がロストグラウンド扱いになってたり、
オーヴァンの後ろ盾を得たクーンがとんでもない事しでかしたり、ハセヲが意識ある頃の志乃に告白してたり。
ただの改変ではなく、ゲーム版のシナリオと漫画版の原作までやった人、間違いなく誰よりもG.U.を理解している人間による
小説媒体に合わせた形での分解と再構築。知り尽くしているからこそここまで手を入れられる。


前にも似たような事を書いた気がしますけど、あえてもう一度。
このシリーズは既にノベライズではなく、もう一つの「.hack//G.U.」です。ゲームとも違う、アニメとも違う、全く別の作品。
そしてそのクオリティは言うまでも無く。1冊あたりゲームのG.U.1本分の価値があると言い切っても過言ではないかと。