神様の悪魔か少年:中村九郎 富士見書房



褒めちぎりスレ住民が評価に困るだろう作品。普通に面白いし、ぶっ飛んだ詩的表現も「涙さん」くらいしか無い。
と言ってもごくありふれた文章というわけではなく、熱狂的ファンが好むであろう九郎的な要素は人体における水のごとく作品全体に浸透している。
超常現象の類は全くなし。悪さを繰り返すヒロインもなかなか魅力的というか地に足のついた女の子というか黒白のメイジを思い出した。
あっちを2.3歳成長させて行動を75度くらいズラした感じ。中村作品中、三番目くらいの良ヒロインだと思う。ちなみに一番はメイジで二番がシスギ。
ストーリーもよく出来てて、まず先読みの不可能なあたりはさすが富士ミス大賞受賞者。全編に悪意の漂う話を書いておきながら
それでもこの作者は善いものが好きなんだなというのが読了後だとよくわかる。この作品が評価されるとしたら、その対象は文章やストーリーよりも
その根底にある、こういう作品を書こうとした作者自身の意思だという気がする。これはそういう本。