樹海人魚:中村九郎 ガガガ文庫



ちーと九郎分が足りないと思いました。
ストーリーの骨子は今までの中村九郎そのものなんですけど、それを表現する肝心の文体が
抑制され過ぎている気がします。まだ1回しか読んでませんから読みきれていない部分もあるかもしれませんが、
黒白やアリフレロを初めて読んだ時のような高揚感は無かったです。もっとこう、ありふれていない調子の、
読者の脳髄を刺し貫くくらいに尖りきった、あるいはすっぽり包み込んで気付かぬうちに五感を剥奪するような、
そういう文章が読みたかったです。後書きを見る限り作者本人も意図して普通っぽいものを目指したそうなので、
次の作品ではぜひ思いっきりはっちゃけて自分の脳髄の被虐心を満たしてほしいところ。
不死と人魚のギミックをきっちり物語に絡めているところや、登場するなり凄い勢いでキャラの立ってた同級生は
どこか黒白のシスギっぽくて大好きなんですけど。あと死花花のこめかみから薔薇が咲いているという描写で紫天使のballADを
思い出して含み笑いしてみたり。黒向日葵といいバラードといい、花は中村先生の好きなモチーフなんでしょうね。