.hack//G.U. Vol.1 死の恐怖:浜崎達也 角川スニーカー文庫



ゲーム版、コミック版の原作を担当した浜崎達也による小説版の.hack//G.U.
前にも書いたとおり、話の内容そのものにはほとんど全く変化がないので手抜きという評価も有りなのだろうけど
大筋でなく細かい箇所には結構手が入っていて、エピソードのいくつかが改変されていたり、並べ替えられていたり、
本来そのシーンにはいないはずのキャラが登場したり、設定というか憑神の演出も変更されていたりする。
それらは適当に手を加えたんじゃなくて、例えば最初ボルドー達に襲われているPCの中にアトリがいるのは
その後の出会いをより印象付けるためだし、シラバスやガスパーが登場せず朔望が最初からカナードにいるのは
紙面の節約と、それから何もかも失ったハセヲに手を差し伸べるという役割をヒロインであるアトリに譲るためで、
憑神がスタンドじゃなく武器扱いになっているのは、文章ではどうやっても君想フ声のスケィスvsイニスの超高速バトルを
ゲームほど迫力のある形で再現できないし、それに加えて憑神バトルで毎回ハセヲだけ戦うのは不自然だという原作の欠点を補うためだったりする。


あと地の文という表現が使えるおかげで、心理描写が原作より細かくなってる。
志乃とハセヲがリアルで待ち合わせするエピソードではわざわざ髪染めて新しい服買ってキメキメなんだけど緊張しまくってる
ハセヲのテンパリ具合が見ていて面白過ぎるし、例のハセヲがアトリにブチ切れるハリボテ世界〜は声が入ってない分ハセヲのテンションは
ゲームより少し低めに思えるけど、その直後にコミック版の「……なに? 誘ってんの?」が追加されてたり受け答えするアトリの
同情を買おうとしている様子がより見え見えで何だかちょっとリアルだったり、戴冠式で志乃のことを知ったアトリがハセヲを軽蔑して
そのせいでハセヲの慌てぶりが切実さを増してたり、その後にオーヴァンがダメ押しを入れていたりする。


そんなわけで自分は十分楽しめた。
まあぶっちゃけ、浜崎氏にとっては同じ話を3度も書いてるようなものだから
そりゃマズかった箇所は修正されるし、面白かった部分を改良するのも簡単なんだろうな、と。