黒白キューピッド:中村九郎 スーパーダッシュ文庫



このゲーム脳どもが―――っ!!!!(10割褒め言葉)


現実そっくりなネットゲームをギミックとして使った無気力少年と恋に恋する少女の物語。
2人の絆が深まっていく過程が丁寧というか独特というか、恋愛物っぽいんだけども主人公もヒロインも別に互いを意識したり
好きだのなんだの言っているわけではない。何となくいつの間にかいい感じの2人になってるんだけどそれは恋人とかそういう関係とは
おそらく違ってて、あえて言うならばコンビというかタッグというか、まさしくタイトル通り黒白キューピッドと表現するしかない。


同じ中村九郎の本なのにロクメンやアリフレロと違って全く評判聞かないからてっきり地雷にもならない作品なのかと
何となく思っていたのだけど、アリフレロが面白かったので信者買いしてみたら自分的に大当たりだった。
アリフレロよりも文章がわかりやすく一般向け。あれを常時エンジン80%だとすると、黒白は前半20〜30%で後半60〜80%という感じ。
自分は80%くらいが好きなんだけど、改めて出力低めの文章を読んでみると言語センスだけでなく話の流し方も上手いと思った。
丁寧なんだけどその丁寧さが個性的すぎるというか。刀鍛冶の一族が百年間山に篭もってひたすら最強の日本刀を追求したら
何か刃が3つくらいある刀が出来ちゃって当然刀じゃねえとか邪道とか言われるんだけど実戦で使ったら1度に3人斬れて凄い強かったとかそういう感じ。
で、中村エンジンが常時フル稼働状態の『ロクメンダイス、』は刃が7振りついていて、それを使いこなせる人間にとっては同時に7人斬れるとてつもない業物だし
実際そういう評価もちらほら見られるのだけど、やっぱりそんなの普通の人には絶対使えないからガラクタ扱いされている、と。


その例えで言うと黒白は普段は刃が1つで使い手がピンチになると隠されていた2つ目が飛び出してくるギミック刀。
一応誰にでも扱える、という点でまさしく中村九郎の入門用にピッタリかと。……ってか何なんだこの例え。


参考資料:中村先生公式インタビュー・黒白キューピッド編