さよならトロイメライ5 ノエル・アンサンブル



説明しよう。『さよならトロイメライ』とは富士見ミステリー文庫壱乗寺かるた氏による
至高にして究極の萌え小説である。この話の作者公認メインヒロインである真霜八千代が読者を萌え殺すのに
かかる時間はわずか0.05秒にすぎない。その様子をスローモーションで見てみよう。


期待しつつ表紙を捲ってカラーページを見る→イラストに八千代がいるのを確認→今日は良い1日になりそうだと思う→
文章が目に入る→嘘だ、嘘だそんな事ー!→ああ『姉弟』ね、別の人の事か、と立ち直る


いや、誰でもあれは一瞬誤解すると思う。だってあらすじからしたらこの辺で冬麻が自分の血筋について自覚する頃なわけで、
むしろ今まで灯台デモクラシーで自分と八千代との関係に思考が向かなかった事の方が不思議だったわけで。
とうとうトーマス気付いたそれでどうなるどうなる! と期待したのだけど、結局また先送り。
わざわざ姉の雪姫と冬麻を「血の繋がった本当の」と自分で強調してるあたり、ほぼ99%義理で確定だと思うのだけど
まあこの巻でこれ以上八千代に突っ込んだら、相対的にメインである泉関係の話が弱くなってただろうし。
エピローグの話からしてこれから本格的に真霜の家と関わる流れな訳で、最終巻までに八千代メインの話も1冊か2冊か
3冊か4冊あるだろうから、そっちで明かしてくれた方がインパクトあるだろうし。
やっぱり時代というか八千代は義理の方が良いと思うのです。いやくっついて欲しいとかそういうのじゃなくて、
個人的に八千代最大の萌えポイントは報われなさだと思うわけで。八千代はトーマスが好きだけど都がいるから自分の気持ちを
押し殺してる。血繋がってるならまだ諦めもつくだろうけど、そうでなく可能性は残ってるから苦悩してしまう。
その辺りの描写としては抱きしめられて泣く4巻が極北。嬉しいと思うこと自体に罪悪感を抱いてる様子がもう。
という訳で、これからも八千代は冬麻と都の間でやきもきして欲しいと思います。
しかし八千代が義理だったら冬麻は義妹2人持ちですか。二刀流アヌビス神もびっくりだ。あの、うらぎりものめ。


あー、この辺で軌道修正して話の内容について。
今回も八千代はいい壷で記憶消去のびっくり姉弟がどうぞなのです遠距離攻撃なABCD包囲網で大変素晴らしかったです。
バトルやら何やらで新伝綺方向に路線変更しかけてるように見えるけど、トーマスのハイテンションな1人称があれば自分は満足。
というか今回はネタの切れ味が過去最高じゃなかろうか。密度高すぎ。
『せっかくだから』 『絶望した!』 『なんて、――』 『まずはその幻想を』 『恐ろしい子……』 『合言葉はラブ』 『太陽拳
色々あったけど、一番笑えたのは集会シーンの『やれ!』 「やれ!」 『やれ』 『やれ!』 「やっちまえーーーー!」
元ネタは『ブレーメン』というロックな漫画に出てくるバンド『サイクロプス』のライブ風景。ネタの狭さという点で今回のベストヒット。
『やれ』って4回言ってるだけなら偶然という可能性もあったのだけど、わざわざ別シーンで『デストローイ!』と言わせてるので確信犯。
全国有数の進学校という設定が微妙に怪しくなってきた。あの人達ノリ良すぎ。どんなネタ振っても応えてくれそう。いいなあ。


6巻以降の内容は鬱入りそうな気配がするけど、それでもトーマスならきっと何とかしてくれると期待してみる。
そういう話に最も縁遠い主人公だし。でも昔みたく自分を犠牲にしてバッドエンド回避とか、そういうのはカンベンな。