"文学少女"と神に挑む作家 上:野村美月 ファミ通文庫



文庫本6冊分の紆余曲折を経てようやくデレ始めたツンデレと連載初期から一緒で恩人の文学少女との間で板挟みになった主人公の心葉が
「まぁ琴吹はそんじょそこらのステレオタイプツンデレとは違うし。何てったって描写が丁寧だからね」とツンデレの方を選ぼうとしたら文学少女の弟の流人くんが
「それマジ有り得ないですって! このシリーズのタイトルはツンデレですか? 文学少女でしょう? 裏表紙のあらすじ読んで下さいよどこにもツンデレの名前なんて無いでしょう!?
 三つ編み貧乳ドジっ子文学少女ですよ!? 太宰だの泉鏡花だのエミリー・ブロンテだのでうっとりできる筋金入りの文学少女ですよ? これが最終巻なんですよ!?
 ラノベ業界広しと言えどこの機を逃したら二度とこんなキャラは出てきませんから! ツンデレは3冊に1人くらいの割合でいますけどこのレベルの文学少女天野遠子1人なんです!」
と必死にメタな説得を始めたけど実際ツンデレにデレられてる心葉の方は
「いや流人くん、ツンデレもそう悪いものではないよ。まあツンデレの作ったレモンパイでも食べたまえ」と余裕の表情。
そこで文学少女の弟である流人くんは2冊の本を心葉に読ませて文学空間を展開し、
「心葉とツンデレ文学少女の関係はまるでこの本のようじゃないですか。それに加えてこっちの本では文学少女とその家族が当事者で彼女はこんな大変な目にあっていて
 この文学的トラウマを解消できるのは心葉しかいないんですよ貧乳を気にする姉とかがいいんです俺は」
というニュアンスの内容を伝えた。
今まで文庫本6冊分くらい繰り返されてきたパターンだけど今回は自分と文学少女の両方が当事者でしかも作家自身が自分の本に縛られているというねじれ構造。
加えて解決法は簡単で心葉がツンデレを捨てて文学少女を選べばいい。心葉自身も文学少女とは長い付き合いで憎からず思っているし三つ編み貧乳は確かに惜しい。
しかし現状を打開するには心葉が小説を書く必要があってそれがどうにも気が進まない。うんうん迷っているとツンデレが来て
「別に書かなくていいんじゃない?」 「ですよねーw」という話になった。それを見た流人くんが「駄目だあのツンデレ……」と呟いたところで下巻に続く。